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2011年5月27日金曜日

NPO法人魁文舎―ダンサー派遣「身体と心のケア」ワークショップ



岩手県宮古で、ダンサー派遣「身体と心のケア」ワークショップを実施してきましたので、報告します。
日程は5月20日~22日の二泊三日。ダンサーはBABY-Qの東野祥子、コーデネーター花光、アシスタント/運転手/記録にカジワラトシオと魁文舎の松本千鶴の4名でした。
21日に朝10時から愛宕小(現在避難者60名)、1時から宮古第二中(78名)、3時に鍬ヶ崎小(74名)の3箇所を実施し、夕方一番大きな避難所の市民アリーナ(150名)を視察。
各避難所とも日中残っていた高齢者、未就学児童と母親、スタッフなど約30名が参加しました。
22日にダンサーは帰京、花光と松本は次回のオーガナイズのため残り、津軽石地区の避難所3箇所を訪問。

今回の実施で改めて実感したことは、避難所の様相は日に日に変化していて、誰も2週間先の状態を掌握予測できず、人頼みのマッチングは期待できない ということ。けれど疲れきったお年寄りや先の見えない不安を抱えた人々がそこに存在し、今必要とされ私たちにできることが少なからずあるということです。
「肩凝っていませんか、腰痛くないですか?少し身体を動かして凝りをほぐしましょう」という呼びかけで始めたワークショップ。最初は及び腰だったお年寄り も序々にまねし始め、気が付けば広い体育館のあちこちでボランティアの人も役所の職員も、ほぼ全員が参加していました。私たちも中に入って、恥ずかしがっ て自分の居場所から出てこない人たちをケア。東野さんの指導は抜群でした。
「久しぶりでいい汗かいたから、今日はぐっすり眠れる。」最後は下着1枚でねじり鉢巻になったお父さんも・・。「首が動かなかったのが動きます。」「たいした楽になりました、毎日少しずつでも続けます。」
身体が楽になると心もほぐれるのか、皆口数が多くなり互いに冗談を言い合って空気が一変しました。初めて笑っている顔を見ました。先週各所長さんに「是非 やってください」と許可をもらったものの、本当にうまくいくか正直不安でした。目を閉じてじっと正座しているお年寄りに、何を話しかけたらいいのか言葉が 見つからず、初めて来た時には声もかけられなかった・・。今回皆の笑顔を見ることができ、一人ひとりと手を握り合って言葉をかわし、本当に来て良かったと 思えました。東野さん、ありがとう、お疲れ様でした。

宮古は交通の便も悪く、東京からは片道6時間弱かかります。宿も三陸沿岸沿いのホテルは全て流され、盛岡から宮古までの30件近い宿泊施設をしらみ つぶしに電話をかけ運良くキャンセルを見つけましたが、それがなければ寝袋覚悟でした。当初は1日3箇所を廻り2日で6箇所を計画していましたが、ダン サーの精神的体力的疲労度も通常の倍以上なので、これ以上のスケジュールは無理だとわかりました。避難所でのワークショップは6月一杯が限度でしょう。仮 設に引きこもってしまったら、お年寄りのケアは難しくなります。以前ダンサーの南流石さんを山田町の避難所に派遣した「いわて災害医療支援ネットワークセ ンター」の本部長にメールと電話で直接支援の打診をしましたが、多忙を極めているとのことでマッチングや連携は見事に断られました。社協のボランティアセ ンターにも再度行ってきましたが、先週依頼したマッチングの申請書は、机の棚に保管されたままでした。避難所の行政担当も週代わりで変わるので、マッチン グは誰にも期待できません。本気でやる気なら自力でコーデネイトするしかないのです。大きな避難所は慰問の嵐ですが、交通手段の不便な小さな避難所は見過 ごされています。今度は6月8日~10日まで、今回訪問した宮古の別な避難所3~4箇所にダンスカンパニーのセレノグラフィカを伴って行く予定で始動して います。

今回視察した市民アリーナで、私たちが帰ろうとしたら追いかけてきたスエット姿の若い女性がいました。「家は流され、お母さんとも生き別れで、死ん だとは思えないから切ない。避難所生活が長く皆疲れきって、心が病んでいる人もいるから、せっかく来てくれてもその好意に応えられない人もいるだろう。そ れでも来てくれたら有難い、やっぱり本心は嬉しいんだと思う。だから覚悟してきてください。応えられない人もいると思って覚悟して、でも来てください。」
私は一瞬胸がつまりました。私は何程のことをしているわけではない。今回の成果でダンスで何かできたと自己満足したらとんでもない慢心だ。この人の痛みや被災者の悲しみに、私たちは何にもできないんだということを自覚しながら、それでもできうる小さな何かをやります。

花光潤子(NPO法人 魁文舎)


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