今回初めて被災地でのワークショップに臨んだ。
昨年9月にも2日間に亘り仙台の10-BOX(BOX1)でワークをさせて頂いたが、その場には「みやぎダンス」カンパニーのメンバーや地元でダンスや演劇活動をされている方々が主に参加され、かなり濃密な空気感が生成したと思う。
しかし、その時「生まれて初めて踊った!」と語ったYさんのお話をお聞きする限りでは、3・11よりほぼ半年過ぎてから被災者の方々の多くが、漸く自らの身体の違和感に気付き始めていらっしゃるように思われた。それまではそんなことに気付く余裕すら無く、連日極度の緊張状態にいらっしゃったのだろう。あの震災は、人の感覚をそれ程までにしてしまうことだったのかと心底思い知らされた。
ウッドデッキでの私のソロ・ダンス公演『放下24』(無音、即興、60分)でも、「みやぎダンス」とWS.に参加された方々が主なお客様になって下さった。照明も音響も無い、ウッドデッキの上に四角く切り取られた青空の下で踊る私を何とか支えて下さったのは、客席にはっきりお顔の見える方々の眼差しだったと今更ながらに思っている。
床面や空間の状態を今ひとつ掴み切れず幾度となく踊りが途絶えたにも拘らず、辛うじて60分続けられたのは何よりその方々の集中力という強い味方が有ったお蔭である。本番前は身体ひとつで踊ることが少しでも彼等への励ましのようなものになってくれればと願っていたが、いざ踊り始めてみると情けなくも私の方が励まされることになってしまった。
そして年明けの今になってやっと、身体を動かしてみたいという被災者のお気持ちをWS.の場に臨んで肌で直に感じた。思えば震災直後より待ちに待った私の本当の出番が遂にやって来た訳なのだが、果たして本当に受け入れて頂けるのか否か?正直、事前にかなりの不安が有った為、仙台在住の「みやぎダンス」定行俊彰・雅代さんご夫妻に全面的なご協力をお願いすることになった。
その結果、全幅の信頼を置けるお二人にしっかりと仲立ちをして頂いたお蔭で、幸いにも2日間共に温かく和やかな場が生まれたように思う。
今回の成果は、たとえ言語のよるコミュニケイションが困難な場合や、且つ身体の動きすらも不自由な場合に於いても、身体での非言語的交流は何らかの可能性を有するとの感触を得られたこと。
是非、今後もこのような活動を継続実施されることを望む。勿論相当な時間が掛かるかも知れないが、続けてゆくことで被災者の方々の心身面に何かしら肯定的な変化が現れるに違いない。
「みやぎダンス」のメンバーも全員多かれ少なかれ被災されていた訳だが、各々それ以降の様々な困難を乗り越えて、確かに逞しくなっていらっしゃったと思う。
「ご安心ください。ダンスはまた始めます。」-震災直後に頂いた「みやぎダンス」Kさんのお言葉。
今やっと、それが実現しつつある。
本当にありがとうございました。
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