日時:2012 年1 月28 日土曜日10:30~11:45
場所:矢本愛育会共生園知的障害者日中活動支援施設
宮城県東松島市
指導:岩下徹
サブスタッフ:定行俊彰定行雅代佐々木大喜佐々木博美
参加者:共生園利用者30 名共生園スタッフ10 名
■継続することが大切な被災地支援ワークショップ6回目
8月からスタートした共生園でのワークショップ。今回はJCDNの協力を得てメイン指導者に岩下徹氏を迎えて行うことになった。
みやぎダンスが8 月より訪問を続けているこの施設。所在地は宮城県東松島市にあり、震災の際は建物は高台にあったこともあって津波の被害を受けることはなかったが、利用者の中には津波の被災を受け、様々な形で被害を受けている人たちが多い。
とにかく顔が見えること。細く長く継続的に行うことが重要と考え、今後3年は継続していくことを考えている。
■ワークショップ
当日は雪の心配もあり、早めに出発。会場には9:50分に到着。利用者の皆さんも送迎バスにのって、徐々に集まり始める。会場に入ると、みやぎダンスの定行のことは皆分かっていて「定ちゃんおはよう」などと言ってにこやかに迎えてくれる。今日はダンスワークショップということが分かっており、参加者はホールに集まり、ワークショップの始まりを待っている。踊ることの楽しさや、この場では強制されないこと。いつも来る人たちが安全であることが伝わっているのか、非常に好意的な雰囲気で、スタート待ってくれている。
ワークショップの冒頭定行より岩下氏を紹介。
スペシャルゲストの登場に会場では拍手がわき起こる。岩下氏は冒頭に、デモンストレーションとしてご挨拶代わりに会場内を即興ダンスで動き回る。会場からは驚嘆の声がわき起こる。
これで一気に会場内の雰囲気は和やかなものになった。
次に岩下氏の提案から、手のぶらぶらや軽いジャンプなどが繰り広げられる。車いすの人、全盲の人、うまく立てない人など様々だけれど、それぞれが自分のできる事をまねしていく。
岩下氏の太鼓のリズムを感じながら全員で会場内を歩き回る。動ける人は、どんどんと歩き、歩けない人は椅子に座り、会場の雰囲気を感じている。車いすのメンバーも笑顔を見せながら動き回っている。
様々な参加形態があってもいいんだというメッセージがこのとき、参加者に伝えられている気がした。動ける人も動けない人も車いすの人もそれぞれのあり方でよい。無理に歩く必要はない。そんなメッセージが無言の内に広がっている素敵な時間だった。
歩き回った後は二人組になってからだをマッサージ。叩いたりこすったりしながら、どんどん会場の雰囲気がほぐれ、笑顔が広がっていく。岩下氏も肩を叩いてもらいながら、本当に気持ちがよさそう。一人一人がそれぞれの関わり方で相手に関わっていく。
からだがずいぶんとほぐれた後、岩下氏の太鼓の合図で、周囲の人たちとくっつく事が始まる。太鼓の合図でくっつき方をどんどん変化していく。恥ずかしがりながらもいろいろなポーズをとりながら参加者のみんなはいろいろなポーズを決めながらくっつきからだでコミュニケーションをしていった。
全員でひとしきり動き終わった後、今度は今「くっつく」という事をやってきたことをみんなの前で発表。
岩下氏の太鼓の合図で二人が前に出て、どんどんとポーズを変えていく。
そんな中、それまで会場の隅にあったソファーで見ていた参加者の一人が岩下氏の横に座り、氏の太鼓に興味津々。岩下氏は太鼓を叩きながらもその参加者に関わり、気がつくと、二人で踊っている人と岩下氏と踊っている人という2ペアができあがる。
岩下氏の突飛な動きに参加者の男性は時には驚いて飛び退いたり、尻込みしたりを繰り返し、会場内は大爆笑の渦。
見ている人たちにも、笑いと共に会場全体への信頼感と安心感が広がっていくのが私にはひしひしと感じられた。
二人組から三人組へと変化しながら参加者がみんなの前で、くっつきながらポーズを変化させていく。
自閉症の参加者も積極的に参加し、動くことを自然に楽しんでいく。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、11 時30 分に。最後に参加者全員で自由に踊る時間。それぞれがそれぞれの参加形態を保ちながら、動くこと、ふれあう事、表現する事を楽しんだ。
■ ワークショップを終えて
「継続は力」今回はそのことを今まで以上に強く感じた。岩下氏が訪問する以前に5回ダンスワークショップを行っている。その中で、顔を顔がつながり、一つの信頼関係ができる。一度信頼関係ができると、その延長上に様々な可能性が広がる。今回岩下氏が今までみやぎダンスで行ってきたこととは異なるエッセンスを提案しながらワークショップを進めてくれた。それをメンバーが楽しんでいた。それが本当に良かったと私は感じている。
岩下氏はその場その場で動く場のエネルギーを察知しながら、次のことを提案していく。時にはからだで動いて見せる。それが、参加者の共感を得て、次に参加者が動いていく。まさに氏が得意とする即興の感覚が場に広がっていく。
私としてはまた岩下氏にここを訪れてほしいと思う。日常的に私たちがワークショップを行っていく。そこへ違う風が吹く。そしてさらに場が豊になる。そんなことを繰り返す内に豊かな場ができるのではないかと。
彼らは被災している。ただ、言葉でそのときの衝撃や感情を表現することが難しい。だからこそ、からだで表現する事が必要となる。でも、そのスキルは持っていない。ダンスの可能性がそこにあると私は思う。
岩下氏のリードで行ったこの一時間の経験は、彼らにとって、言葉にならないレベルで肯定的な影響をもたらしていると私はその場にいて思った。また、このような場を持つことができればと思う。
supported by