日時:2012 年1 月29 日日曜日10:30~11:45
場所:仙台市宮城野区扇町4丁目仮設住宅全80戸
指導:岩下徹
サブスタッフ:定行俊彰定行雅代
参加者:仮設住宅居住者10 名見守り支援スタッフ4 名
■初めての仮設住宅ワークショップ
9 月に一度扇町1丁目仮設住宅のダンスプログラムにアシスタントとして参加。今回の場所でのワークショップは初めてである。岩下氏も私も開催前に何より心配したのは、参加者がいるかどうかだった。告知チラシは全戸配布したものの、果たしてそれでいいのか?参加者は集まるのかが不安だった。また、どんな年齢層なのかも。
集会所の環境を知るためにも開始1時間前には会場入りして、会場内をほんの少し片付け、開始時刻を待つ。仮設住宅の自治会長・副会長は早々にいらしたものの果たして他の参加者は?という思いで時間を過ごした。開始時刻10 分前、初老の男性がいらした。続いて女性も。開始時刻には、なんと10 名の仮設住宅居住者の皆さんが集まってくれた。
参加者が集まったことで、ひとまず大きな第一関門をクリアした思いで、いよいよワークショップはスタートした。
■ワークショップ
広さ4間×4間ほどの集会場に椅子を配置。ほとんどがご高齢の方々。1名は若い子ども連れのお母さん。まずは、岩下氏から座ったままでできる事をしましょうと提案。
自分で手のひらをこすり、腕をさすり、足をさする。そして、座ったままで腰を軽く叩いてマッサージ。自分一人で行うのだけれど、参加者からは「暖まるね。」「気持ちいいね。」と声が出る。
胸や肩を軽く自分自身で叩いて、次に手のひらを指圧。手のひらの真ん中あたりを親指で押さえていく。みんなの表情がだんだんと変わっていくのが伝わってくる。
次に、「立ってください」と岩下氏。腕をぶらぶらにした状態で前後に腕を振る事にみんなは挑戦。
「腕の力を抜いて、ひざを少し緩めて、ブランコのように。」という岩下氏のアドバイスを聞きながらみんな熱心に行っていく。
次は、前後の動きから、腰を回して腕を回していく運動に進んだ。腕の力を抜きぶらぶらと腕を回していく。「これは腰が伸びるので腰痛に効くんですよ。」と声がかかると、幾分腕を回す早さがアップ。皆さんが腰痛を持っていたり、腰が重たい生活をしているんだという事が伝わってくる。
ここまで来ると会場の雰囲気はかなり和んできている。「きもちいいんだっちゃね。」「一人でできっちゃね。」などと思い思いに話しながら進んできた。
ここで、岩下氏が「では、次に二人組になってください。できれば同性同士で。」と話すと一気に会場内は誰と組むかで、盛り上がる。中には、「せっかく女性と組めると思ったのに・・・・」とはしゃぎながら男性同士で組む人も。
一人が座って、もう一人がその膝枕に寝る。と岩下氏がやってみせるだけで、会場内はまた盛り上がる。
気持ちいいね。いいっちゃね。
人の膝枕ということが本当に少なく、今の生活の中では嬉しいものだということが伝わってきた。
肩を押してもらったり、腕をもんでもらったりと相互に交代しながら進んでいく。「こうたいーーーー。」と言う声を聞くと「こっちだけ早いんじゃね?」なんて声も漏れるぐらい、会場は打ち解けている。最中にある女性のご主人が来たらしく、一人会場から抜けた。すると、メンバー構成上、男女のペアができ、気持ちよさそうにやっている。それを見ていたある初老の男性が「これは、夫婦和合のマッサージだっちゃ」と独り言。すぐそばにいた私は思わず吹き出してしまった。それほどみな気持ちよさそうに相手に身を任せて、やっているのだ。
次に岩下氏から新たな提案が。「一人は人形です。自分では動けません。その相手を動かしてあげてください。」と言って、デモンストレーションを参加者と披露。女性の働きかけで岩下氏の姿勢がどんどんと変わっていく。たった姿から床に寝てしまう。そんな二人の関わりを見ながら、周囲からは、感嘆の声が上がる。
「さあ、ではやってみましょう。」
「えーーーーーー」
でもみんなおそるおそるやり始める。
「そこは50 肩だから痛いよ」
「今まで使わない筋肉を使うね」
「なんだか変な感じ。でもおもしぇ。」
そんな声が聞かれながら場はどんどんと盛り上がっていく。参加者のからだのコミュニケーションは自然と確実なものになっていく。これこそ、「からだでおはなし。」
気がつけば、私から見るとみんな踊っている。ひーひー言いながらも、からだ同士のお話を楽しんでいる。
中にはうなるほどの踊りの達人も現れる。
こうして一時間という時間はあっという間に過ぎ去り、今回のワークショップは終了。
岩下氏からも「皆さんとてもよく踊っておられましたよ。」との話が。
参加者は、からだが楽になった。とても暖かくなった。等の話がでつつ、今回のプログラムは、気がつけばあっという間の一時間で終了した。
■ ワークショップを終えて
仮設住宅でのダンスワークショップは今受け入れられるのか?今回の開催を企画した私も若干の不安はあった。震災から10ヶ月。生活することがそこそこに軌道に乗りつつ、まだまだ先の不安はある。そんな中で、今、ダンスが、踊りが、果たす役割はあるのか?
そんな疑問が私にはあった。今はないが、避難所が開設されている頃、私は、今はダンスの出番ではないと感じていた。生きることに精一杯で、からだの感覚に注目するにはほど遠いと考えたからだ。でも10 ヶ月過ぎた今なら、大丈夫かもしれない。だけれど、自信もない。そんな思いで迎えた今回の仮設住宅でのワークショップ。
やり終えて、その不安は、解消された。きっとこれからからだの感覚に関する支援が大切になると。踊ることが目的ではない。からだを動かし、楽になる。からだを使って他者とコミュニケーションを図る。自分自身のからだに気づく。このことがきっとこれから、求められるだろうと。
「継続は力」だとう思う。私自身は、今回のワークショップを出発点として、ピンポイントの活動だけれど、今回訪問した扇町4丁目仮設住宅でのワークショップを継続的に行っていきたいと思う。「あのおんちゃん達が来たら、からだが楽になることするよね。おもしぇーよね。」と、分かってもらえれば、最高だ。
たった1回の支援が全くだめだとは思ってはいない。だけどどうせ、私も仙台に住んでいるのだから、今回のように現地サポーターとして動いて、同じ場所で、顔が見える・名前を覚えられるような活動を行いたい。そう思っている。
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