今回は、JCDNのダンサー派遣活動とAVN311(http://www.avn311.jp/)と、現地の活動団体との今後の連携の可能性などを探る目的で、東松島市の子育て支援センターと、せんだい演劇工房10-BOX内に事務所を置くARCT(http://arct.jp/)を訪問してきました。
・東松島市役所 矢本子育て支援センター「ほっとふる」
宮城県東松島市矢本字大溜9-1
〈訪問の経緯〉
AVN311を通じて、JCDNのダンサー派遣に関心を持って下さった「日本プライマリケア連合学会(PACT)」(http://www.primary-care.or.jp/-care.or.jp/)より、被災地各地の小さいお子さんのいるお母さんの支援になにかつながれば、ということで紹介されました。
元々予定されていた、お母さんたち向けの医療関係者との相談会に同席し、そこで、子育て支援センターのスタッフや、来訪するお母さんや幼児たちの様子などを実際に見て、今後の可能性について話し合えればというようなお申し出から、今回の来訪につながりました。
〈訪問メンバー〉※敬称略
JCDNマッチングサイト登録ダンサー:山田珠実、早川朋子
仙台在住ダンサー:千田優太
ARCT事務局:伊藤み弥
※千田さんと伊藤さんは、仙台の踊りにいくぜの関係者でもあります。
〈当日の様子など〉
午前中は、子育て支援センターと日本プライマリケア連合会の人たちによる相談会「妊婦・赤ちゃん広場「専門家とおしゃべりタイム」」に、オブザーバー的に参加。
15組ほどのお母さんとお子さんたち。お子さんの年齢は3ヶ月くらいの赤ちゃんから3歳児くらいまで結構幅がありました。
子育て支援センタースタッフの方による、手遊びや短いわらべうた遊び、お母さんとお子さんどうしのちょっとした自己紹介のようなゲームがあって、場がほぐれたところで今回派遣されてきた専門家チーム(小児科医、栄養士、看護士、保健士など)からそれぞれに少しお話がありました。その後、お母さんたちはそれぞれに、話を聞きたい専門家の周りに集まって、近くでこどもたちをおもちゃで遊ばせながらいろいろ相談したりする、というような流れ。
事前に、子育て支援センタースタッフの方から、「あちらにぬいぐるみがたくさんありますので、みなさん(私たちのこと)も、それを持ってお子さんがいるつもりになって、一緒に参加して下さい。」と言われたので、各自思い思いのぬいぐるみを手に手遊びなどに参加。
前半のワークショップ的な流れの中での、お母さんや幼児たちの様子は、被災地だからというような特別なことは表面的にはあまり見受けられない、同じようなことを後で専門家の方も言っていました。お母さんやお子さんたちの服装や雰囲気を見ていて、なんとなく、少しでも明るく前向きでいたい、という気持ちがあるようにも思いましたし、センターのスタッフの人たちも、安心してリラックスし、心の和らぐような雰囲気をつくるようにされているなとも感じました。実際には、大きなお腹を抱えて後ろから水が迫る中避難
し、その後で出産されたという若いお母さんがいたり、「上の子がちょっと赤ちゃんがえりをしているんです。」と話される方がいたり、それぞれに不安やストレスを抱えながら子育てをしているという状況もあるようでしたが、直接的にそうしたことを話題にはしない、あえてしない、というようにも見えました。いずれにしても、外からの見え方だけなので、本当のところはわかりません。
今回、企画をしている矢本子育て支援センターのスタッフに加えて、地元の少し年配の女性のボランティアスタッフや、隣町で現在避難所になっているため活動ができなくなっている別のセンターのスタッフ、視察的に来られていた石巻のセンターのスタッフの方も参加していて、専門家の方と話す以外にも、あちこちで、こうした方たちとなんとなく話したりしているお母さんたちがいたり、こうした応援スタッフが子どもたちと遊んでくれていることで安心して他のお母さんと話したりしているお母さんたちもいました。こうした環境と時間がとても必要とされているようでした。
午前中の会の後、スタッフと専門家チームの方と話す時間が持てました。
看護士さんや小児科医の先生からは、お母さんの肩がとても張っているので、それをほぐすようなことがしてもらえたら、という意見がありました。肩や背中の血流が良くなると、母乳の出も良くなるということです。
スタッフの方からは、お母さん自身のリラックスやストレス軽減も必要なので、ダンサーの方となにかできるとしたら、そうした目的で、親子でできるものもいいけど、すぐ側で託児をしてもらえて、子どもと離れてできる時間もあるといいのでは、という意見も聞きました。
また、今回、仙台在住の千田さん、伊藤さんが一緒だったことはとても大きな意味があったと思います。
センターの方もお母さんたちも、同じ地元の人がいると言ったとたんに、明らかに表情が和らぎます。中には、「じゃあ、継続的にかかわってもらったりもできるんですね。」と言われた方もいました。
また、石巻のセンターの方は、「うちはここぐらいの小さいおこさんたちも多いけど、もう少し大きめのお子さんたちも多いのですが、そうした場合でもなにかお願いできたりしますか?」ということを聞いて帰っていかれました。
〈ARCT訪問MTG〉
午後は、沿岸の被災地域を通って仙台市内に戻りました。だいぶ瓦礫が片付いたところもあれば、まだかなりそのままの状態で残されているところもありました。山田さんと早川さんは、こうした状況を目にするのは今回が初めてでした。
私たちのためにと、わざわざ沿岸を通ってくれた千田さんと伊藤さんですが、私たちにとっては非日常的なこの光景が、既に日常に近いものとなっていること、外からやってくる人たちを案内する度に感じる温度差のようなものが、なにか疲れさせてしまうのではないかとも思いました。それでも、こうしていろいろな人たちとつながって、自分たちの地域のために動こうとしている彼らの意志と責任感の強さも同時に感じました。
10-BOX内のARCT事務所では、事務局の鈴木拓さんや他のスタッフの方と、朝から一緒だった伊藤さんと、今日の午前中の報告や今後についての話をしました。前日夜に伊藤さんから紹介されていた、ARCT出前部のリーダーでダンサーの千田みかささんも途中から参加されました。
現在ARCTでは、出前部が避難所や学校や施設などあちこちでのワークショップ活動などを行っています。
ニーズはかなり増えていて、継続的な関わりが求められる場も多いため、現在のメンバーでのコーディネート業務や活動がだんだんと大変になってきているようです。また、ワークショップの手法などをある程度持っていてすぐに活動できる人材にも限りがあるので、人材の育成も急ぎの課題として浮上しています。
こうした課題を、今後AVN311やJCDNの活動との連携によって少しでも解決することができたらと思いました。
恊働での研修や、手法などを共有するための場があってもいいでしょうし、コーディネート業務を代行して外部から派遣されるアーティストの現場に現地のアーティストが一緒に入るように常に事前に情報を伝えて声がけしていくとか、具体的な方法が既にいくつか考えられると思います。こうした連携は一方的に現地の関係者のためと考えるのではなく、今後の社会の中でアートが果たす役割などを考える上で、お互いにとって有益な、相互に協力しあう活動として考えていけたらとも思います。
また、ARCTのように地元で活動を継続している人たちや、一般的な支援活動を支える人たちの心身の疲労に対して、なにかできることも一緒に考えたいと思いました。
いずれにしても、地元の団体や人と恊働して、長期的な視野に立ってできることを、これから具体的に検討していく必要があると思い ました。
以上です。
吉野さつき
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